軸足と利き足は違う仕事をしている
人間は2本足で立ちます。
マルマトリートメントという手技で足を丁寧に緩めていくと、物質として存在する足の本質が見えてきます。例えばそれは、人間の足の仕事の優先順位の最上位は「体重を支えることではない」という事実です。優先順位の最上位は「第一歩を踏み出すこと」です。
第一歩を踏み出すためには何をするべきか?と問うてみると、答えは、第一歩を踏み出すことができるように、その足が前に出やすい状況を作ってあげる……ということになります。
2本の足で立っているので、それぞれの足が50%ずつ体重を負担していたら、第一歩を踏み出すのに大変な努力や判断が必要になります。
しかし足が負担する重さが40対60、30対70などに振り分けられていると、負担が少ない方の足は容易に第一歩を出すことができます。容易にというのは、考えず、判断せずに出せる。ということです。
地面に対して垂直に立つ「いのちの形」として、地球上で成功をおさめているものは植物です。地面の中に根を差し込んで、土をしっかりとつかまえて、身体をまっすぐに立てて、上と円周方向にどんどん身体を大きくしていきます。身体が大きくなればなるほど、生存の可能性が高まります。
人間は、植物のいのちの形を真似することはできません。
風が吹いても雨が降っても、地表を歩き、さまよう。
一カ所に根を生やして大きくなることが生存に直結するのではなく、さまようことが生存に直結する。
昔昔、食べ物を探して歩き回っていた時と、生存のための 必要条件は何も変わらないのです。
人間のいのちの形は、地表を歩き、さまようこと。
そのいのちの形をまっとうさせてあげるためには「体重を支えること」 ではなく「第一歩を踏み出すこと」が足の仕事の最優先になります。
この最も大事な仕事を行うために、第一歩を踏み出す足の体重を肩代わりしなければならない。そこで、体重を肩代わりした側が軸足。身軽になった側が利き足。となります。
この2本の足は、必然的に求められる仕事が違います。
目的が違うので、この2本の足が働いた、その結果も異なります。
写真は、100円ショップで購入した靴の中敷きです。
革靴の中に敷いて、数カ月歩きました。その結果、「2本の足は違う仕事をしている」という事実がそのまま、中敷きに転写されました。
軸足側にはこれでもか、と重力がかかり、中敷きが大きく変形しています。利き足側は軽やかに動き回った結果、擦り切れています。
いのちの神秘は、こういうところからも感じ取ることができます。
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